2010年 UTAU (2010/11/10発売)の頃 | |
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あいにゆくよ SAWA (2010) Epic (Sony) | |
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1. Samba De Mar (Nakatsuka Takeshi Remix) [作詞作曲 大貫妙子 編曲 中塚武] 5曲目 SAWA: Vocal 中塚武: Remix またろう (三沢またろう): Percussion 副田製歩: Sax 勝部賢太郎: Trombone 小沢篤士: Trumpet 写真上 初回限定盤(本曲含む) 2010年4月7日発売 写真下 通常盤(本曲含まず) 1. Samba De Mar (Takeshi Nakatsuka Remix) [Words & Music: Takeo Onuki, Arr: Takeshi Nakatsuka] 5th track by SAWA from the album "Aini Yukuyo" (I'm Going To See You) on April 7, 2010 (Initial Issue Only) |
SAWA5枚目のミニアルバム。曲毎に異なる作曲家・サウンドクリエイターと組み、ファンタスティックな世界を展開している。SAWAによる大貫さんの「Samba Du Mar」のカバーは、2009年発売のコンピレーション・アルバム「Seaside Town」に収められていたが、本アルバムの初回発売分に限り、同曲のリミックスが含まれていた。なお初回限定盤と通常盤とはジャケット写真が微妙に異なっている。 「Seaside Town」ではTrak Boysによるプロダクションだったのに対し、ここでは中塚武が担当していて、同じ録音のSAWAのボーカルを使って、全く異なる演奏を付けている。イントロはビリンバウ(ブラジル音楽のパーカッション)から始まる三沢またろうのパーカッション、曲中ではサックス、トロンポーン、トランペットによるブラスセクションがフィーチャーされ、よりソリッドなリズムが強調された音作りになっている。両者を聴き比べると、サウンドクリエイターの個性が違いがわかって面白い。 私は発売当時はこの手の音楽を聴いていないので、ここで述べている事はあくまで高齢者が現在の視点で聴いたうえでの感想になる。そのうえで感じることは、SAWAのボーカルは正確無比な音程とリズム感、そして平面的な歌い回しによりボーカロイド的な色合いが強いものになっているが、同時に彼女の声そのものに聴いていると生理的快感を覚えるような人間味もあって、それが彼女の最大の魅力になっていると思う。 その他の曲について 1. あいにゆくよ [作詞 SAWA 作曲制作 縄田寿志] 遠距離恋愛を歌った曲。歌詞がすばらしい。プロモ・ビデオあり。 2. Jet Coaster [作詞 SAWA 作曲 久保田真悟 制作 Jazzin' Park] Jazzin' Parkは久保田慎吾と栗原暁のユニット。 3. サイダー [作詞 SAWA 作曲制作 大久保潤也] 昔の恋を消えてゆく泡になぞった歌詞がいいね。 4. Super Looper [作詞 SAWA 作曲制作 Ram Rider] クラブのきらめく世界を歌っている。 5. Samba Du Mar (初回発売盤のみ収録) SAWAによる2通りの「Samba Du Mar」の聴き比べを楽しめるよ。 [2025年7月作成] |
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Dear Friends V 岩崎宏美 (2010) Imperial | |
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6. 黒のクレール(With 塩谷哲) [作詞作曲 大貫妙子 編曲 塩谷哲] 6曲目 岩崎宏美: Vocal 塩谷哲: Piano 2010年10月20日発売 6. Kuro No Claire With Satoshi Shionoya (Black Claire) [Words & Music: Taeko Onuki, Arr: Satoru Shionoya] 6th track by Hiromi Iwasaki from the album "Dear Friends V" on October 20, 2010 |
2001年の「風の道」に続く、岩崎宏美(1958- 東京都出身)2曲目の大貫さんカバー。「Dear Friends」は岩崎が2003年に出したカバーアルバムが好評でシリーズ化したもの。本アルバムが5作目で「VIII」2019まである。2作目からはインターネットにおけるファンからのリクエストを参考に選曲され、6作目からはさだまさし、阿久悠、筒美京平という作曲家特集という内容。 本アルバム全12曲中、「With Name」というピアノ伴奏者の名前を冠した曲が5曲あり、塩谷哲と大江千里が各2曲、小坂明子が1曲という内容。大貫さんの 6.「黒のクレール」は塩谷哲との演奏。彼は1966年生まれで、1986年から10年間、サルサ・バンドの「オリケスタ・デ・ラ・ルス」でピアノを弾き、その後は岩崎宏美の伴奏・編曲を多くするようになった人だ。研ぎ澄まされた静謐なピアノ演奏をバックに岩崎が粛々と歌う。シャンソンの香りが微かに漂う好演だ。 他の曲について 1. Love Love Love [作詞 吉田美和 作曲 中村正人 編曲 塩谷哲] Dream Come True 1995 原曲はビートルズ風、ここでは塩谷のピアノのみの伴奏。 2. あなた [作詞作曲編曲 小坂明子] 小坂明子 1974 16歳の時のデビュー作品で、世界歌謡祭で最優秀・グランプリを獲得して大ヒットを記録した曲。ここでは本人がオケなどの編曲を手掛け、ピアノも弾いている。 3. 黄昏のビギン [作詞 永六輔 作曲 中村八大 編曲 大江千里] 水原弘 1959 ちあきなおみ1991年のカバーが有名。ピアノ伴奏の大江千里は元シンガーソングライターで、2007年よりジャズピアニストに転向しており、センスあふれるジャズピアノの伴奏をつけている。 4. 恋のフーガ [作詞 なかにし礼 作曲 すぎやまこういち 編曲 中井幸一] ザ・ピーナッツ 1967 声質が同じ妹の良美とのデュエットで、オリジナルのハーモニーを見事に再現。バックはアロージャズオーケストラ。 5. 愛燦燦 [作詞作曲 小椋佳 編曲 渡辺俊幸] 美空ひばり 1986 オリジナルの貫禄に負けない堂々とした歌いっぷりが良い。 6. 黒のクレール 7. はじまりはいつも雨 [作詞作曲 Aska 編曲 坂本昌之] Aska 1992 チャゲ&アスカ時代にアスカのソロで大ヒットを記録。 8. 真夜中のドア〜Stay With Me [作詞 三浦徳子 作曲 林哲司 編曲 Bro. Kone] 松原みき 1979 今やJポップの名曲と評価されている曲を2010年にいち早くカバー。これはスゴイ! 八神純子、花田千草(松千のボーカリスト)を迎えた3人ボーカルとBro. Koneのアレンジ、そしてDa Bubble Gum Brothers Bandの伴奏による鉄壁のカバーで、そのグルーヴはオリジナルを凌駕している。なおこの3人組はThe★Three Soul Pigrees と称して同じバンドをバックにNHKみんなのうたで「ピンクと呪文」(2011年2月〜3月放送)を歌い、「真夜中のドア」をカップリングとしたシングルが2011年2月16日に発売されたが、3月11日に発生した東大日本大震災の影響のため、盛り上がらなかった。 9. L-O-V-E [作詞作曲 Bert Kaempfert, M. Gable 編曲 宮哲之] Nat"King"Cole 1964 アロージャズオーケストラをバックに英語と日本語で歌う。 10.駅 [作詞作曲 竹内まりや 編曲 大江千里] 中森明菜 1986 竹内のセルフカバー1987も有名。大江のピアノによるジャズコンボのバックに切々と歌っていて素晴らしい出来。 11. 花 [作詞 御徒街凧 作曲 森山直太朗 編曲 坂本昌之] 中孝介 2007 森山によるセルフカバー2008もあり。 12. 虹〜Singer〜 [作詞作曲 さだまさし 編曲 服部隆之] 雪村いづみ 1994 歌い手の業を描いた壮大なスケールの曲で、ここでもオリジナルに引けを取らない歌唱を見せている。 類まれな歌唱力と聴く人の心を癒すアルト・ヴォイスで、古今の名曲を自分のものにし切って歌う様は、52歳という成熟した歌い手が到達した境地を見せてくれる。 [2025年7月作成] |
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Discover Vol.II 山田タマル (2010) Power Play Music | |
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7. 都会 [作詞作曲 大貫妙子 編曲 太田貴之 or 平畑徹也] 7曲目 タマル: Vocal, Producer 平畑徹也: Keyboards 太田貴之: Guitar, Slide Guitar MIYA (三宅信也): Wood Bass 田中真二: Drums 注: 2010年11月から2016年まではアーティスト名を「タマル」に改名していたので、「Vol.II」発表時は「タマル」名義。 写真上: Discover Vol.II (「都会」収録) 2010年11月24日発売 写真下: Discover Vol.I 2010年6月18日発売 7. Tokai (City) [Words & Music: Taeko Onuki, Arr: Takayuki Ota or Tetsuya Hirahata] 7th track by Tamaru from the album "Discover Vol.II" on November 24, 2010 |
山田タマル(1982- 東京都出身)は主にインディーズで活躍するシンガー・ソングライターで、現在も元気に活動中。そんな彼女が2010年にセルフ・プロデュースにより2枚のカバーアルバムを出した。6月発売の1枚目が洋曲、5ヵ月後の2枚目が日本の歌をメインとした選曲だった。あまりジャンルにこだわらず、本人が歌いたい曲を選んだ感じで、ステージ演奏に近い感じのサウンドになっている。その2枚目の「Vol.II」に大貫さんの「都会」が入っている。 7.「都会」のコードは原曲とほぼ同じ感じであるが、こちらのほうがよりリラックスした感じの演奏・歌唱で、イントロはアコースティック・ギターのアルペジオ、途中からエレキピアノとリズムセクションが加わり、間奏はスライドギター。山田は丁寧に歌っている。 その他の曲について [編曲 太田貴之 or 平畑徹也] 1. 遠くに行きたい [作詞 永六輔 作曲 中村八大] ジェリー藤尾 1962 テレビ番組「遠くへ行きたい」で有名になった。 2. 黄昏のビギン [作詞 永六輔 作曲 中村八大] 水原弘 1959 元はシングルB面だったが、多くの歌手に歌い継がれてスタンダードに。ちあきなおみ1991年のカバーが有名。 3. 中央フリーウェイ [作詞作曲 荒井由美] 荒井由美 1976 結婚前のアルバム「14番目の月」に収録された名曲。 4. マンハッタン・キス [作詞作曲 竹内まりや] 竹内まりや 1992 同名映画の主題歌。ここではジャズのアレンジ。 5. 花 [作詞作曲 喜納昌吉] 喜納昌吉とチャンプルーズ 1980 1995年の石嶺聡子のカバーでヒットし、世界各国で歌われるようになった。 6. 異邦人[作詞作曲 久保田早紀] 久保田早紀 1979 最初CMソングで流れ、エキゾチックなムードが受けて大ヒットした曲。 7. 都会 8. The Water Is Wide (Bonus Track) [スコットランド民謡] 本アルバムの中で唯一の外国曲。古くからある民謡をピート・シーガー等が歌って広め、私としては1991年のカーラ・ボノフのカバーが一番。そういえばNHK朝ドラの「マッサン」2014-2015にも使われていたね。ここでは伴奏で「Joy To The World」のメロディーが流れるアレンジ。Skoop On SomebodyのTAKE (武田雅治)がゲストで登場しデュエットで歌っている。 原曲に囚われず、独自のアレンジで歌っている曲も多いが、奇をてらわない素直で自然な感じに好感が持てる音作りで、彼女の歌声の魅力をしっかり引き立てている。 ついでに「Vol.I」の曲についても触れます (2枚目と同じミュージシャンによる録音のため雰囲気は同じ。編曲 太田貴之 or 平畑徹也)。 1. Smile [作詞 John Turner, Geoffrey Parsons 作曲 Charlie Chaplin] チャップリンが1936年に作曲したメロディーに歌詞を付けて、1954年ナット・キング・コールによりスタンダードとなった。 2. コーヒー・ルンバ [作詞作曲 Jose Manzo Perroni 訳詩 中沢清二] ベネズエラの作曲家によるスペイン語曲「コーヒーを挽きながら」1958 がオリジナル。1962年の西田佐知子の翻訳カバーが日本での定番。 3. My Favorite Things [作詞 Oscar Hammerstein II 作曲 Richard Rogers] ブロードウェイ 1959でメアリー・マーティンが、映画 1965でジュリー・アンドリュースが歌った「Sound Of Music」の挿入歌。ここではジャズっぽいアレンジ。 4. Blackbird [作詞作曲 John Lennon, Paul McCartney] The Beatles 1968 アルバム「The Beatles (White Album)」収録のフォーク調の曲。ここでのピアノをメインとしたアレンジが面白い。 5. Love Me Tender [作詞 Ken Darby 作曲 George R. Poulton] Elvis Presley 1956 この曲については説明不要。 6. All You Need Is Love [作詞作曲 John Lennon, Paul McCartney] The Beatles 1967 シングル(編集アルバム「Magical Mystery Tour」に収録) 1967年通信衛星による宇宙中継特別番組で本曲の演奏シーンが世界24か国に同時放送された。原曲の派手な音作りに対し、ここではオーソドックスなアレンジになっている。 7. 君の瞳に恋してる [作詞作曲 Bob Crewe, Bob Gaudio] Frankie Valli 1967 英語タイトルは「Can't Take My Eyes Off You」 名曲ですね〜。1982年にBoy Town Gangがディスコ調アレンジでカバーしている。 8. 言葉にできない [作詞作曲 小田和正] オフコース 1982 本アルバムでこの曲のみ日本の歌。 本当に好きな曲を歌っているという気持ちが伝わってくる作品。大貫さんの「都会」も誠実なカバーです。 [2025年7月作成] |
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Qualia 福原タカヨシ (2010) PSW | |
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7. 春の手紙 [作詞作曲 大貫妙子 編曲 福原タカヨシ] 7曲目 福原タカヨシ: Vocal, Acoustic Guitar 西山哲穂: Slide Guitar 2010年12月1日発売 7. Haru No Tagami (Spring Letter) [Words & Music: Taeko Onuki, Arr: Takayoshi Fukuhara] 7th track by Takayoshi Fukuhara from the album "Qualia" on December 1, 2010 |
帯のキャッチフレーズ: 稀代のソウル・ミュージック・スタイリスト=TFが贈る、時間と距離を超越する「質」にこだわった渾身のカヴァー・アルバム (注:
TFは福原のイニシャル、アルバムタイトル「Qualia」は言葉では言い表せない「感覚質」のこと) 帯に掲載された小坂忠の賛辞:気持ちのよいアルバムだ。声の質って大事なんだよね、巧さだけじゃ伝わらないものを伝える力がある。ほっとしたり、何かを気づかせてくれたり 福原タカヨシ(1977- )はソウル、ゴスペルを愛するシンガー・ソングライター。シングル、アルバムの発表、コンピレーションアルバムへの参加、各地でのコンサート開催の他に、キリスト教徒としての教会活動、ゴスペル・グループの一員としての音楽活動をしてきた彼が制作したカヴァーアルバムが本作だ。彼が愛する古今、内外のソウル・ミュージックの名曲が収められている。 大貫さんの「春の手紙」はテレビドラマ「家裁の人」のために作曲され、1993年にシングル、2005年のアルバム「One Fine Day」に山弦のバックによる別バージョンが発表されている。福原がカバーの参考にしたのは後者のほうで、ソウル・ミュージックのカバーアルバムにこの曲を入れるなんて一見場違いに思えるけど、実際聴いてみると見事にソウルフルで、他の曲と調和している。HMV&BOOKSのオンラインサイトの記事「福原タカヨシ全曲解説」2010年12月7日付で、本人が本曲について以下のとおりコメントしている。 TBS系ドラマ「家裁の人」の主題歌となったオリジナル・バージョンもさることながら、この曲の"2005 version"を初めて聴いたとき、”純朴でいて深い”歌詞の世界と大貫さんの歌声、そして山弦さんの奏でるアコースティック・ギターが”完璧”に溶け合っている世界にとても深い感動をおぼえました。大貫さんの歌詞は、人称の視点を変えるとまた別の世界が見えてくるので、聴くごとに新たな発見と広がりを感じます。アレンジについては、やはり自分にとって自然な”歌+ギター”という編成でチャレンジしたいなと思ったのですが、正直なところ、前述の「"2005 version"編曲との違いを出せるのか?」という課題と、「カヴァーの意味」ということをあらためて考えさせられた曲でした。”自分の歌”を追い求めていきながら、何度もライヴで歌わせていただき、その中で練られていった部分が大きいと思うのですが、そういった意味で、この曲は特に、一つ一つのライヴで育ててもらった”感謝の実”だと思っています。 コンサートで歌い込んだ感じの歌唱で、ソウルに満ちた暖かみのある声が本当に魅力的。ライブでは弾き語りが常というギターの伴奏も上手い。それに加えて同じ敬虔なキリスト教徒で音楽仲間の西山哲穂(「てつお」と読む)のスライド・ギターがいい味を出している。 他の曲について(以下 特記ない場合は 編曲 福原タカヨシ) 1. 夢の中であえるでしょう (作詞作曲 高野寛)高野寛 1994。 もともとキングトーンズのために書いた曲を、彼が坂本龍一編曲で先行リリースした作品。翌年本曲を含むキングトーンズのアルバム「Soul Mate」が発売された。シュガーベイブの「Down Town」1975に並ぶジャパニーズ・ソウルの名曲。ここでの弾き語りによるカヴァーは秀逸。 2. スウィートソウル(作詞作曲 堀込泰行)キリンジ 2003。堀込兄弟の弟の作品。福原のミックス・ヴォイスによる高音の歌声は凄いね。ライヴな感じのバンドによる演奏もいい。 3. 君のために (作詞作曲 SAKURA) SAKURA 1998。1980年代以降はビートが効いたダンサブルな曲が主流となったソウル音楽のなかで、こんな1970年代R&B風のゆったりしたバンド・アレンジは懐かしく、逆に新鮮に聞こえる。 4. Inside My Love (作詞作曲 Minnie Riperton, Richard J. Rundolph, Leon Ware) Minnie Riperton 1975。オリジナルは全米76位。有名な「Loving You」1975 全米1位に勝るとも劣らない曲だと思う。共作者のレオン・ウェアーは1979年にセルカバーしている。ここでの躍動感あるバンドサウンドと歌唱も素晴らしい。 5. Say You Love Me (作詞作曲 Patti Austin) Patti Austin 1976。この曲の詳細については 「50〜90年代の名曲集」の「Say You Love Me」を参照ください。ここではソウルシンガー mimi-Kとのデュエット。私が大好きな歌なので、うれしい! 6. そして僕を愛して(作詞 ORITO 作曲 ORITO, 中村成孝, 深尾尚宏) ORITO 1997。2008年心不全のために急死したソウル・シンガーORITO(本名 折戸都志郎)のデビュー・シングルにして名曲。ここではアコースティック・ギター2本によるしっとりした演奏。 7. 春の手紙 8. Music (作詞作曲 Omar Lye Fook) Omar 1992。ブリティッシュ・ソウルの曲で、本アルバムでは唯一モダンなアレンジによるサウンド。 9. 一人じゃないよ (作詞作曲 小坂忠)小坂忠1977。アルバム「Morning」1977収録。小坂一人の多重録音によるゴスペル風のアカペラ・ソングで、彼がクリスチャンとしてゴスペル・シンガーに転身する過渡期の作品。同じキリスト教徒で、小坂を師と仰ぐ福原は彼へのオマージュとしてギターと簡単なパーカッションの伴奏のみでカバーしている。 10. Give Love On Christmas Day [作詞作曲 Berry Gordy Jr., Alphonso Mizell, Freddie Perren, Deke Richards, Christine Parren 編曲 シゲ山本] The Jackson 5 1970。モータウン・レコーズのクリスマス・ソングとして制作されたのもので、リード・ボーカルは若き日のマイケル・ジャクソン。本曲はボーナス・トラックで収録されたもので、ストリングスをバックに切々と歌ってる。 注: 上述のセルフ・ライナーノーツにつき、これらの曲についてのコメントも素晴らしいので、興味のある方は是非サイトを参照ください。 彼はその後、2015年演奏旅行中に交通事故に遭い両足に重傷を負ったが、懸命のリハビリにより復帰。現在も活動を続けている。 目が覚めるような芳醇な「春の手紙」のカバー。 [2025年8月作成] |
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2011年 東京オアシス(オリジナル・サウンドトラック (2011/10/12発売)の頃 | |
せんせいっしょにうたお〜 @ わだみやこ & ながそようこ (2011) 音楽センター | |
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1. メトロポリタン美術館 [作詞作曲 大貫妙子] 9曲目 わだみやこ: Vocal ながそようこ: 監修責任者 2011年4月20日発売 1. Metropolitan Bijutsukan (Metropolitan Museum) [Words & Music: Taeko Onuki] 9th Track by Miyako Wada from the album "Sense Issho Ni Utao" (Ma'am Let's Sing Together) on April 20, 2011 |
(株)音楽センターは、CD・DVD・楽譜の販売、音楽教室の開催、アーティストによるコンサート、教育・保育に係るイベントの開催などを行っている。同社が2011年に発売したCD「せんせいっしょにうたお〜」は5枚からなる子供向け童謡集のシリーズで、同じタイトルの楽譜集も発売されている。歌っているのはながそようこ(長曽葉子)、わだみやこ(和田みやこ)等で、その第1集に大貫さんの「メトロポリタン美術館」が入っている。 伴奏はシンセサイザーと打ち込みによるもので、サウンド面で独自のアイデアは見当たらない。わだのボーカルは「歌のおねえさん」的。まあ安心して聴いていられるね。 インターネットで見つけた彼女のプロフィールには、「大学在学中より声楽を学ぶ。小学校教諭を経て、こどもの文化運動に参加。心を打つ澄んうたごえには定評がある一方、こどもと泥まみれになって遊ぶのがとてもよく似合う不思議な人」とあった。なお彼女に関して調べたが、本作以外には、2009年8月にながそと一緒に開催した「せんせいっしょにうたお〜講習会」(子供達を指導して一緒に歌い合奏するイベント)の活動記録しか見つからなかった。講習会の時期がCDよりも前なので、その好評を受けてCD化の企画が立ち上がったのだろう。 CDには28トラック収録されているが、内14曲が歌入り、残りが同じ歌のカラオケという構成で、歌入り14曲中9曲がわだ、4曲がながそ、1曲が二人による歌となっている。ながそは大学卒業後に養護学校の講師となり、障害児の音楽教育に関わる他、子供の歌の作曲・編曲・ピアノ演奏や、幼稚園・保育園・小学校や福祉施設等で音楽活動を行っていたそうで、コンサートの記録が残っている。本CDでは監修責任者を務め、楽譜集ではピアノ、合奏のアレンジを担当。 [2025年7月作成] |
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Midnight Explorer サノトモミ (2011) April | |
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1. 都会 [作詞作曲 大貫妙子 編曲 林有三] 3曲目 サノトモミ: Vocal 林有三: All Instruments (except Guitar), Producer 竹中俊二: Guitar 金井緑: Excecutive Producer 2011年9月14日発売 1. Tokai (City) [Words & Music: Taeko Onuki, Arr: Yuzo Hayashi] 3rd track by Tomomi Sano from the album 'Midnight Explorer' on September 14, 2011 |
エイプリル・レコードはインディー・レーベルの会社で、他に放送用音源の製作、アナログ・レコードやCDの受託製造などを行っている。クニモンド滝口、林有三、押塚丘大からなるユニット、流線形のファースト・アルバム「City
Music」が2003年当該レーベルから発売され、そこでのゲスト・ボーカリストがサノトモミ(1975- 東京出身)だった(流線形はその後同レーベルから離れて瀧口のソロユニットとなり、2008年に比屋定篤子を招いて大貫さんの「何もいらない」が入ったアルバム「ナチュラル・ウーマン」を出している)。一方サノは2005年に「サイレントフライト」でソロデビューし、続いてエイプリル・レコードの経営者でソングライターでもある金井緑が実行役となって制作したセカンド・アルバムが本作だ。全8曲中3曲がカバーで、他は3曲が金井の作詞作曲、残りの2曲が金井作詞、音楽監督の林有三作曲となっている。シティ・ポップの王道というべき内容で、洗練されたアレンジと演奏をバックに歌うサノの歌声は、アイドル系のような無垢な声質でありながら、どこかクールで退廃的な大人のムードを漂わせていて、真夜中の部屋の明かりを消して聴いていると、心が透き通り都会の夜景が目に浮かんでくる。 1.「都会」のグルーヴ感はオリジナルとほぼ同じで、あえて変えずに(変えようがなく?)林が敬意を表したのだろう。原曲の坂本龍一による派手なシンセソロに対して、ここでは竹中俊二によるギターソロがフィーチャーされる。 サノの憂いを帯びた声が曲にぴったり合っているので、聴いてきて気持ちが良い一曲だ。 他のカバー曲について(以下編曲 林有三) 「夢は波に乗って」(作詞 伊達歩 作曲 山本達彦) 4曲目 山本達彦 1979 アルバム「メモリアル・レイン」収録。浜辺の街を描いたボサノバ調の佳曲で、オリジナルのアレンジは松任谷正隆。 「きっと言える」 (作詞作曲 荒井由美)7曲目 荒井由美 1973 2枚目のシングル、アルバム「ひこうき雲」 本格的に売れ出す前の初期の名曲で、当時不思議に響いた転調がとても新鮮な曲だった。荒井(松任谷)由美の曲は、ハイファイセットの山本潤子を除いて、他の人が歌っていいなと思うことがないけど、このカバーは例外。いつもより低めのキーが魅力的なサノのヴォイス、カッコイイ竹中のギタープレイ、林の丁寧な編曲、特にオリジナルのようにフェイドアウトせず、しっかりと終わっているところもとてもいいね〜 オリジナル曲について どれもいいけど、あえて挙げるとタイトル曲の「ミッドナイトエクスプローラー」(作詞作曲 金井緑)1曲目と、最後の曲 「東京タワー」(作詞 金井緑 作曲 林有三)8曲目かな。いずれも歌詞・サウンドに浮揚感があって、サノのクリスタルな歌唱がぴったりはまっている。 サノトモミは北海道在住で、現在も各地で不定期なコンサート活動を続けている。 シティ・ポップの究極的なサウンドによる「都会」のカバーだ。 [2025年7月作成] |
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2012年 東京オアシス(オリジナル・サウンドトラック (2011/10/12発売)、Tint (2015/6/10) の頃 | |
Home 井上侑 (2012) Shinko Music | |
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3. メトロポリタン美術館 [作詞作曲 大貫妙子 編曲 清水一登、片寄明人] 3曲目 井上侑: Vocal 清水一登: Piano 片寄明人: Producer 2012年6月6日発売 1. Metropolitan Bijutsukan (Metropolitan Museum) [Words & Music: Taeko Onuki, Arr: Kazuto Shimizu, Akito Katayose] 3th Track by Yu Inoue from the album "Home" on Junel 6, 2012 |
井上侑(1987- 愛媛県生まれ、東京都育ち)は、シンガー・ソングライターとして2000年代後半から自主制作盤の発表やライブハウス、ストリート・ライブなどの音楽活動を始めて、メジャー・レーベルや自主制作で作品を発表、現在も活動を続けている。本作は彼女が24歳の時のアルバムで、通常自作曲を弾き語りをする彼女が、ピアノ伴奏を他人に任せて「NHKみんなのうた」の歌唱に専念したもの。 片寄明人(1968- ) は音楽プロデューサーとして活躍しながら、奥さんのChocolatとのデュオ Chocolat & Akitoのアルバムを出した人。デュオ名義で、本ディスコグラフィーに登場したコンピレーション・アルバム「Lingkaran For Babys」2007や「Pure Voice〜J Cover〜」2008に参加している。清水一登 (1956- ) はヒカシューのメンバーで、キーボード以外に様々な楽器を演奏するマルチ・プレイヤー。 3.「メトロポリタン美術館」を歌う井上の声は、若々しく素直でピュアな魅力がある。清水の伴奏は、原曲のアレンジをピアノ一台で踏襲した感じ。演奏・歌ともにシンプルな美しさにあふれている。本曲の次は、大貫さんが「HNKみんなのうた」1983で歌った4.「みづうみ (「ペール・ギュント」組曲第2番「ソルヴェイグの歌」から)」(作詞 Honrik Ibson 訳詩 山川啓介 作曲 Edvard Hagerup Grieg)。大貫さんが作詞・作曲に関与していないので、オリジナルは本ディスコグラフィーの「Various」に掲載し、ここでのカバーは対象外とした。両者を聴き比べると、大貫さんのひんやりとした声からは、夜明けの神秘的な風景が目に浮かぶが、井上の声は朝日が差した暖かみのある雰囲気を醸し出しているように思える。 他の曲について (編曲は 清水一登、片寄明人。表示順は曲名、作詞作曲者、「NHKみんなのうた」のオリジナル・シンガー、初出年、特記事項) 1. 赤とんぼ(作詞 三木露風 作曲 山田耕筰)東京放送児童合唱団 1965。三木が1921年頃に書いた詩に、1927年山田が曲をつけたもの。清水のピアノのコードは、オリジナルとは異なるモダンな響きで面白い。 1961年放送開始の「NHKみんなのうた」の初期は、既存曲のカバーが多かった。 2. 太陽の子どもたち(作詞 あまだしん 作曲 小野リサ) 小野リサ、松原典子(東京少年少女合唱隊) 1992。自然と子どもたちのふれあいを歌った名曲。 3. メトロポリタン美術館 4. みづうみ 5. 童神 〜天の子守歌〜 (作詞 古謝美佐子 作曲 佐原一哉) 山本潤子 2002。ハイファイセット解散後の山本がソロで歌っている。沖縄音階による美しい歌で、オリジナルは作詞者(作曲者は夫)の古謝美佐子1992で、夏川りみ 2003のカバーが有名。井上の優しさ一杯の歌いっぷりがいいね。 6. 僕は君の涙 (作詞作曲 太田裕美) 太田裕美 1998。原曲はエレクトロ・ポップ風のアレンジだったが、ここでのピアノのみの伴奏とストレートな歌唱は秀逸。 7. 大きな古時計(作詞作曲 Work Henry Clay 訳詞 保富庚午)立川澄人 長門美保歌劇団児童合唱部 1962。原曲は1876年出版。 8. クマのぬいぐるみ(作詞作曲 みなみらんぼう) 吉岡雄介(東京放送児童劇団)1987。清水のニューオリンズ風ピアノが素晴らしい。 9. アオゾラ (作詞作曲 吉本佳代)吉本佳代 2005 当時新人だった富山県在住のシンガー・ソングライターの作品。世界の平和を祈る本当にピュアな曲・歌唱。 10. おもいでのアルバム(作詞 増子とし 作曲 本田鉄麿) ダークダックス 1981。 1982年の芹洋子のバージョンもある。幼稚園の卒園式で歌われる定番曲。 . 誠実でピュアな歌とピアノ伴奏による名曲・佳曲に心が震える。 [2025年8月作成] |
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The IDOLM@STER ANIM@TION MASTER 生っすかSPECIAL 03 (2012) 日本コロムビア | |
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1. 会いたい気持ち [作詞作曲 大貫妙子 編曲 丸山哲生] 8th track 秋月律子(声 若林直美): Vocal 丸山哲生: Arranger 中川浩二: Sound Producer 写真: 向かって左の眼鏡の娘は秋月律子、右は高槻やよい (2012年9月26日発売) 1. Aitai Kimochi [Words & Music: Taeko Onuki, Arr: Tetsuo Maruyama] 8th track by Ritsuko Akizuki (Voice: Naomi Wakabayashi) from the album "The IDOLM@STER ANIM@TION MASTER Nama-Suka SPECIAL 03 on September 26, 2012 |
THE IDOLM@STER(略称 アイマス)は、バンダイナムコエンタープライズ(旧ナムコ)が2005年に始めた育成シュミレーション・ゲーム。765プロダクションに所属する候補生のなかから好きな人を選んで、プロデューサーとしてファンに支持されるアイドルの育成を競うもの(すみません。私はこの手のゲームをやった事がないので実感わきません)で、大ヒットにより漫画、アニメ番組やCDの制作、声優達によるコンサートの開催などメディアミックスの一大シリーズとなった。 アニメーション「The IDOLM@STER」は、ゲームと同じキャラクターが登場するが、独自のストーリーで25話+特別編が制作され、2011年7月〜12月にテレビ放送された。その第15話より始まった、アイドル達が出演する劇中の生放送番組「生っすかSPECIAL」に沿ったCDが別途制作され、その第三部(3枚目)が本アルバムだ。それは番組から秋月律子(声 若林直美、元アイドル候補生のプロデューサー。眼鏡がトレードマーク。)、高槻やよい(声 仁後真耶子、アイドルのひとり)、プロデューサー(声 赤羽根健治 ゲームにおけるプレイヤーの立ち位置に相当)の3人が登場するバラエティーで、スタジオ内のオーディエンスの拍手歓声(いかにもわざとらしいのが面白い)の中、アニメの劇中番組と同じ構成で進行する。 オープニング・トークに続く曲は、ゲームでたびたび流れる「愛 LIKE ハンバーガー」(作詞 白瀬彩 作曲編曲 MBGI(田島勝朗) 歌 秋月・高槻)1st Trackで、ジャケットのイラストはこの曲から。本曲については様々な出演者が歌う複数の映像をニコニコ動画で観ることができる。そして各出演者の「チャレンジのコーナー」(例えば高槻は「先輩にタメ口をきく」など)とカバー曲の歌唱が入る。 大貫さんの「会いたい気持ち」は秋月律子が歌うカバー曲のひとつ。声を担当する若林直美(1975- 鳥取県生まれ、広島県育ち)は声優・舞台女優で、声優としては秋月の声が代表作。声優のアニメ・ヴォイスによる歌唱であるが、前向きな感じのこの曲には意外に合っていて、とてもいい感じ。でも好き嫌いが分かれるかもしれないね。打ち込みっぽい伴奏について、アルバムには編曲者のクレジットがなかったが、「アイマスDB」というサイトには丸山哲生とあった。一方アルバムには全体のSound Producerとして中川浩二の名前が載っているので、実際に音を作ったのはこの二人のうちのどちらかだろう。 他の曲について。「らぴゅらぴゅ」(作詞 ふじのマナミ 作曲 片岡嗣実 歌 高槻)4th Track はパーキッツ2004、「Brand New Wave Upper Ground」 (作詞 Yuki 作曲 Takuya 歌 秋月)5th Track はJudy And Mary 2000、「Yell 〜エール〜」(作詞作曲 小渕健太郎 歌 プロデューサー)7th Trackはコブクロ 2001のカバー。みな明るく真面目に歌っていて好感が持てる。「明日があるさ(ジョージアでいきましょう編)」(作詞 青島幸男 (替え歌 福里真一) 作曲 中村八大 歌 プロデューサー)8th Trackは、元は1963年のバラエティー番組の主題歌として坂本九が歌ったものだが、2000年コカ・コーラの缶コーヒー飲料「ジョージア」のCMに替え歌が使われてリバイバル・ヒットした曲で、吉本興行の芸人達やウルフルズなどいろんな人が歌った。また「トイレの神様」(作詞 植村花菜 山田ひろし 作曲 植村花菜 歌 高槻)11th Track は、植村の原曲に忠実に、9分54秒の長尺をじっくり歌っている。 バラエティー番組としての作りであるが、音楽はどれも真面目に取り組んでいて、それなりに面白い。アニメ・ヴォイスによる「会いたい気持ち」を楽しみましょう。 [2025年8月作成] |
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2013年 東京オアシス(オリジナル・サウンドトラック (2011/10/12発売)、Tint (2015/6/10) の頃 | |
都会 HF International (2013) Spiral Beats Productions | |
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1. 都会 (City Lovers Rock Edition Vocal) [作詞作曲 大貫妙子 編曲 HF International] Single A面 2. 都会 (City Lovers Rock Edition Dub) [作詞作曲 大貫妙子 編曲 HF International] Single B面 Shiho.C: Vocal 福田征希: Piano, Synthesizer, Programming 平岩克規: Programming 戸城孝啓: Guitar 写真上: シングル(2013年2月22日発売 A面 City Lovers Rock Edition Vocal) 写真下: シングル(2013年2月22日発売 B面 City Lovers Rock Edition Dub) 1. Tokai (City) (City Lovers Rock Edition Vocal) [Words & Music: Taeko Onuki, Arr: HF International] Single A-Side 2. Tokai (City) (City Lovers Rock Edition Dub) [Words & Music: Taeko Onuki, Arr: HF International] Single B-Side by HF International from the single on Febuary 22, 2013 |
HF International (アッシュエフ・インターナショナル)は、DJ平岩克規とマルチ奏者福田制希による名古屋在住のユニットで、本作がシングル・デビュー盤となる。大貫さん(作詞作曲)と坂本龍一(編曲)によるシティポップの名曲をラヴァーズ・ロックのサウンドでカバーしたもの。ラヴァーズ・ロックとは、イギリスに住むジャマイカ系移民がソウル音楽を取り入れて独自のサウンドに発展させたレゲエのサブジャンルのこと。ここではShiho.Cという、ちょっとソウルフルでかつクリスタルな歌声の女性歌手をフィーチャーして、スウィート・アンド・メロウなサウンドに仕上げている。 B面のタイトルについている「Dub」は、レゲエの原曲にエコー、リバーブ、ディレイなどのサウンド・エフェクトを施して別の曲に仕立て上げる制作手法で、ここではボーカル抜きのインストルメンタル・バージョンになっている。 本盤はその後希少盤として中古市場で高値を呼び、2016、2020、2023年に再発されるが、それらについては「都会 Re-Issue 2016」でふれることとする。 HF Internationalは他に面白い作品を出しているが、特に興味深いのは2016年に出したシングル「If You Want It」だろう。これはNiteflyteというアメリカのグループ1979年の曲(全米37位)のカバーなんだけど、ここでは明らかに、1980年2月17日のFM東京の番組「サウンドアプローチ」での山下達郎と吉田美奈子によるスタジオライブでの演奏をベースにしているのだ。HF Internationalのカバーを聴いていると、当時この放送を聴いてぶっ飛んだ記憶が生々しくよみがえってくる。 数ある「都会」のカバーのなかでも、文句なしに筆頭に挙げられる名作。 [2025年8月作成] |
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2013年 東京オアシス(オリジナル・サウンドトラック (2011/10/12発売)、Tint (2015/6/10) の頃 | |
Spring Is Mine Lilly me (2013) evergreen presents | |
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1. 色彩都市 [作詞作曲 大貫妙子 編曲 松永宏紀] 1曲目 Lilly me: Vocal, Producer 越田太郎丸: Guitar さくら: Violin 松永宏紀: Sound Producer 2013年4月17日発売 1. Shikisai Toshi (Colored City) [Words & Music: Taeko Onuki, Arr: Hiroki Matsunaga] by Lilly me from the album "spring is mine" on April 17, 2013 |
Lilly meは2000年に東京で音楽活動を開始。2007年からLilly meと名乗りライブを始めて、2008年と2009年に2枚のカバー・アルバムを発表。2013年に本作を出し、2016年に新アルバム制作のアナウンスをした後に表舞台から姿を消している。彼女に関しては、プロフィール等の資料がなく、わかったのは上記3枚のアルバムと数本のYouTube動画が残っていること、そして3人の女の子の母親(CDジャケット内に娘達との写真がある)として、日常生活に寄り添う音楽を創るという姿勢のみ。 本作は3枚目のアルバム。全7曲中3曲が欧米曲、2曲が日本曲のカバーで、残り2曲が本人が作詞・作曲に関わったオリジナルという構成。大貫さんの「色彩都市」は、ナイロン弦ギターとバイオリンを中心とする伴奏によるボサノヴァ・アレンジによるカバー。グロッケンシュピール風、ベースなどその他の音は明記されていないが、サウンド・プロデューサーの松永宏紀が担当しているものと思われる。Lilly meの歌声は優しい呟き系で、最初聴いて時折音程が不安定になるなと思ったが、何度か聞くうちに、ナチュラルな声の魅力の中に埋もれて気にならなくなった(と言っても、この声は聴く人により好き嫌いが別れるかもしれないね)。そして手作り感・透明感のある伴奏により、心地よい音楽になっている。 他の曲について (編曲は 松永宏紀) 1. 色彩都市 2. spring is mine [作詞 Lilly me 作曲 中川久史 Lilly me] オリジナル曲 3. How Deep Is Your Love [作詞作曲 B.A. Gibb, M.E. Gibb, R.H. Gibb] 1977 ビー・ジーズ 全米1位の名曲。ナイロン弦ギターのアルペジオのみによるシンプルな伴奏。キュートな声が曲に合っている。 4. Loving You [作詞 M. Riperton 作曲 R. Rundolph] 1974 ミニー・リパートンのこれまた名曲で 全米1位。2台のナイロン弦ギタ−とシンプルなパーカッションによる演奏で、イントロとエンディングの「ラララ」のコーラスに子供の声が入っている。 5. 世界の果て[作詞 Lilly me 作曲 中川久史 Lilly me] オリジナル曲 6. ベルベット・イースター[作詞作曲 荒井由美] 1976 荒井由美 アルバム「ひこうき雲」収録の初期の曲。原曲と異なるギターがメインのクリスタルな演奏が新鮮。 7. The Never Ending Story [作詞作曲 G. Moroder, K. Forsey] 1984 Limahl 同名映画の主題曲 全米17位。原曲はエレクトロ・ポップのサウンドだったが、ここでのボサノヴァ・アレンジもとてもいいね。 全体的に彼女の声に似合う曲が選ばれていて、優しい声、優しいアレンジによる「色彩都市」が聴ける。 [2025年7月] |
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Blue Vacation ナミノート (2013) Omagatoki | |
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3. 横顔 [作詞作曲 大貫妙子 編曲 小林治郎] 3曲目 Erika: Vocal, Chorus 小林治郎: Acoustic Bass, Acoustic Guitar, Cajon, Bongo, Triangle, Shaker, GlockenSpiel 2013年7月24日発売 3. Yokogao (The Profile) [Words & Music: Taeko Onuki, Arr: Jiro Kobayashi] 3rd track |
ブラジル音楽やシティポップスを愛する小林治郎(埼玉県出身)は、1994年頃からプロとしての音楽活動を始め、比屋定篤子の音楽パートナーとして1997〜1999年にリリースされた彼女のアルバムの作曲(全曲)、編曲、演奏(ベース、ギター等)に関わった。代表作は「まわれまわれ」、「メビウス」(「Composer」の記事「なにもいらない」2009参照)。2001年彼女が沖縄に帰ることになったため、彼女とのユニットは解消となり、その後は他アーティストへの楽曲提供やセッション参加などの活動を行っていたが、新人ボーカリストのErikaと出会って、2010年からナミノートとして活動を開始した。 本作は2013年に発表した初アルバムで、全11曲中オリジナルは2曲、8曲がシティポップス、1曲がブラジル音楽のカバーという構成になっている。大貫さんの「横顔」は小林のギター、ベース、パーカッションの多重録音によるバックで、キーボードを使わないストリングス・バンドの透明感あるサウンド。ノンヴィブラートで飾り気のないErikaのボーカルとともに明るい感じの演奏になっている。 その他の曲について (編曲 小林治郎) 1. カナリア諸島にて [作詞 松本隆 作曲 大瀧詠一] 大瀧詠一 1981 アルバム「Long Vacation」収録、シングル「君は総天然色」のカップリング。 2. 常夏のIkema-池間- [作詞 渡邊シュウ 作曲 小林治郎] オリジナル。 「池間」は宮古諸島にある小さな島。沖縄出身の作詞家による日本のトロピカル・アイランドの歌。本作でカバーされた名曲群に劣らぬ眩しい光を放っている。 3. 横顔 4. 素直になりたい [作詞作曲 杉真理] ハイファイセット 1984 シチズンのCMに使われた曲。 5. 夏のクラクション[作詞 売野雅勇 作曲 筒美京平] 稲垣潤一 1983 富士フィルムのCMソング。 6. Don't Know Why [作詞作曲 Jesse Harris] Nora Jones 2002 全米1位。トラディショナルとジャズが融合したサウンドは当時とても新鮮だった。 7. Midnight Love Call [作詞 南佳孝、有川正沙子 作曲 南佳孝] 石川セリ 1977 南佳孝によるけだるい感じのボサノバ曲で名曲。彼は1980年にセルフカバーしている。 8. 曇り空 [作詞作曲 荒井由美] 荒井由美 1973。50年前に「ひこうき雲」を聴いた時の驚きと感動が蘇ってくる。 9. Batucada [作詞作曲 Paolo Sergio Valle, Marcos Valle] Marcos Valle 1968。 バトゥカーダはサンバのスタイルのひとつで、メロディーや歌のない打楽器のみの演奏をさす。ブラジルのシンガー・ソングライター、マルコス・ヴァリの名曲のひとつで、ダンスの喜びをポルトガル語で歌っている。 10. てぃーんずぶるーす [作詞 松本隆 作曲 原田真二] 原田真二 1977 懐かしいね! 11. 夕暮れの横顔 [作詞 Erika Yook 作曲 小林治郎] オリジナル シンプルな編成によるバンド・サウンドは、はっぴいえんどを彷彿させる。 その後Erikaは2児の母となり、二人はナミノートの活動を続けたが、2022年に小林は尾張文重と「えとらんぜ」という新しいユニットを結成し現在に至っている。 ブラジル音楽とシティポップスの美味しい取り合わせ。オリジナル曲が光っている。 [2025年8月作成] |
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2015年 Tint (2015/6/10) の頃 | |
都会/California Woman Cat Boys (2015) Cony/Jet Set | |
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1. 都会 [作詞作曲 大貫妙子] シングルA面 高木壮太: Organ Fukaishi Norio (No Rio): Bass Uramoto Uminari (Ulapton): Drums 注: ベースとドラムスについては漢字名の情報がなかったので、アルファベットの表記にしました。 2015年10月30日発売 1. Tokai (City) [Words & Music: Taeko Onuki] Single A-Side by Cat Boys from the Single on October 30, 2015 |
私は1960年代、青山にあった父の社宅に住んでいたことがある。それは青山学院中等部の裏にあり、当時は原っぱや斜面の林などがある静かな所で、そこでセミやクワガタを採った思い出がある。それが1964年のオリンピック開催に伴う道路整備により、青山学院のキャンパスの下にトンネルを掘って、渋谷から六本木に抜ける道路(六本木通りと首都高速3号渋谷線)を整備したことで、家から渋谷までのアクセスが劇的に改善した。それを機会に街の雰囲気は一変、六本木通りは当初は静かなオフィスが立ち並んでいたが、お洒落な都会の街並みに変貌を遂げていった。 そのトンネルの手前の青山学園高等部と六本木通りの間のスペースに「青山蜂」というクラブがある。1960年代にその通りを歩いて渋谷に行っていた私には信じられないことだ。1995年にオープンし、多くのDJとアーティストを輩出した老舗で、風営法やコロナ禍で苦労したそうだが、今もがんばって営業している。Cat Boysはそこを本拠地とするオルガン、ベース、ドラムスからなる3人組のグループ。彼らが2015年に出したシングル盤レコードで大貫さんの「都会」をカバーしている。 Cat Boysは2013年に活動を開始し、キーボードの高木は音楽プロデューサー、映像作家、ライターとしてマルチな人。ドラム奏者はUlaptonという名前でDJもしていたが、現在はZutsuki Dという人に替わっているらしい。「都会」はオルガンをメインとしたインストルメンタルで、3人というミニマムなメンバーによるファンク・バンドとしてグルーヴ感一杯のプレーだ。B面の「Carifornia Woman」(作詞 Kathy Wakefield, Leonard Caston 作曲 Leonard Caston) はエディ・ケンドリックス1977年のカバー。 ラウンジ・ファンク・トリオによる「都会」のインストカバー。 [2025年8月作成] |
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2016年 Taeko Onuki meets Akira Senju Symphnc Concert (2016/12/21) の頃 | |
都会 (Re-Issue) HF International (2016-2023) Spiral Beats Productions, Urban Discos | |
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1. 都会 (Silent Poets Remix_Dub) [作詞作曲 大貫妙子] 2016 Single B面 Silent Poets(下田法晴): Remix 2. 都会 (City Lovers Rock Vocal Dub Edition) [作詞作曲 大貫妙子 編曲 HF International] 2020 Single A面 Shiho.C: Vocal 福田征希: Piano, Synthesizer, Programming 平岩克規: Programming 戸城孝啓: Guitar 3. 都会 (Nautilus Re-work) [作詞作曲 大貫妙子] 2023 Single B面 Shiho.C: Vocal [Nautilus] 中林万里子: Keyboards 梅沢茂樹: Bass 佐々木俊之: Drums 写真上: シングル(2016年8月17日発売 B面 Silent Poets Remix_Dub) 写真中: シングル(2020年12月9日発売 A面 City Lovers Rock Vocal Dub Edition) 写真中: シングル(2023年9月20日発売 「都会」表紙) 写真下: シングル(2023年9月20日発売 B面 Nautilus Re-work) 1. Tokai (City) (Silent Poets Remix_Dub) [Words & Music: Taeko Onuki] Single B-Side by HF International from the single on August 16, 2016 2. Tokai (City) (City Lovers Rock Vocal Dub Edition) [Words & Music: Taeko Onuki, Arr: HF International] Single A-Side by HF International from the single on December 9, 2016 3. Tokai (City) (Nautilus Re-work) [Words & Music: Taeko Onuki] Single B-Side by HF International from the single on September 20, 2023 |
2013年に発売されたHF Internationalのシングル「都会」は、2006年、2020年、2023年に再発された。ここではそれらについてまとめて述べる(2006年の記事ですが、2020年および2023年の再発盤についてもまとめて書きます)。 2006年の再発盤はA面は「都会(City Lovers Rock Edition) feat. Shiho.C」というタイトルで、2013年のシングルA面と同じ録音が収められたが、B面の「都会(Silent Poets Remix Dub)」は新たに制作されたトラックになっていた。それは下田法晴(みちはる)のユニットSilent Poetsによるダブ・リミックスで、原曲断片のみを残して、あとは全く異なる内容になっていて、妖しげな世界を創り上げている。これだけ改変されてもHFの名前で発表しているのは、彼らがプロダクションに関わっているからだろう。 2020年の再発盤はA面「都会(City Lovers Rock Vocal Dub Edition) 」で、B面は「Give You My Love」という別の曲。2013年のダブがインストルメンタルだったのに対し、ここでは「歌のダブ」ということで、ボーカル入りのトラックにリバーブやディレイを深めにかけたエフェクト処理によって、スペーシーな感じに仕上がっている。 2023年はUrban Discosというレーベルから再発されたシングルで、A面は2006年盤と同じ「都会(City Lovers Rock Edition) feat. Shiho.C」になっているが、B面は新たに録音されたNautilusというバンドによるリウォーク・バージョンが入っている。これはShiho.Cのボーカルとコーラスのトラックに新たなバックを付けることで、全く別のバージョンに仕上げている。Nautilusはドラム奏者の佐々木俊之をリーダーとするトリオで、ジャミロクワイなどのようなグルーヴィーなアシッド・ジャズのバンドで、ボブ・ジェームスの曲から命名したそうだ。彼らのバックにより、当初のラヴァーズ・ロック・エディションとは全く異なるサウンドになっているのが面白い。クラブ・ミュージックの醍醐味であるグルーヴという点では同じだけどね。 10年にわたって展開された「都会」のバリエーションが楽しめる。 |
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